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債権譲渡禁止特約付き売掛金はファクタリングを利用できる?

債権譲渡禁止特約付き売掛金を、ファクタリングで現金化したいと考えていませんか。できないだろうと考えている方もあきらめる必要はありません。民法改正により環境は大きく変わっているからです。このページでは、「債権譲渡禁止特約付き売掛金をファクタリングで現金化できるか」を解説しています。

目次

ファクタリングとは

ファクタリングは、売掛債権を買い取ってくれるサービスです。最も大きなメリットは、決済日を待たずに売掛債権を現金化できること。ファクタリング会社によっては、その日のうちに現金を支払ってくれます。売掛債権を売却するため、返済義務がない点、審査の基準が緩やかである点も魅力です。ファクタリングは、新たな資金調達方法として注目を集めています。

債権譲渡禁止特約付き売掛金とは

ファクタリングを利用する際に注意したいのが、債権譲渡禁止特約付き売掛金です。債権譲渡禁止特約とは、債権の譲渡を禁止する特約です。つまり、この特約が付いている売掛金は、原則として譲渡できないと考えられます。売掛金にこのような特約が付される理由は以下の通りです。

・支払先の変更などに手間がかかるため
・反社会勢力に譲渡されることを防ぐため
・支払ミスを防ぐため

債権譲渡禁止特約は、これらを防ぐ目的などで付されることが多いようです。

今まで特約付きの売掛金はファクタリングができなかった理由

これまで、債権譲渡禁止特約付き売掛金はファクタリングを利用しづらいと考えられていました。譲渡無効と判断される恐れがあったため、ファクタリング会社が買取してくれなかったからです。
もちろん、交渉で特約を解除すればファクタリングを利用できますが、解除することも難しいといえます。解除が難しい理由は、債務者から信用を得ていないと交渉すらできないからです。また、資金繰りに困っていると判断されると取引を停止される恐れもあります。よって、債権者は特約を解除したくても交渉すらできないケースが多かったのです。
以上の理由から、債権譲渡禁止特約付き売掛金は、ファクタリングを基本的に利用できないと考えられていました。

民法改正で特約付きの売掛金はファクタリングが可能に

債権譲渡禁止特約付き売掛金とファクタリングの関係は、民法改正(2020年4月施行)により大きく変わっています。具体的には、債権譲渡禁止特約付き売掛金であってもファクタリングを利用できるようになりました。以下のような改正が行われたからです。

民法466条(改正前) 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
民法466条(改正後) 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

改正前は、当事者が反対の意思を示すと債権を譲り渡すことはできませんでした。改正後は、当事者が債権の譲渡を禁止(または制限)しても、債権譲渡はその効力を妨げられないようになりました。この改正により、ファクタリングを利用できるようになったのです。
ただし、一定の事由に該当する場合、債務者は支払いを拒否して元の債権者へ支払うことができます(民法466条3項)。この場合、元の債権者から新しい債権者へ支払いが行われます。
出典:e-Gov法令検索:民法

債権譲渡禁止特約付き売掛金であってもファクタリングを利用できます

ファクタリングは、売掛金を買い取ってくれるサービスです。決済日を迎えていない売掛債権を現金化できます。ただし、債権譲渡禁止特約付き売掛金は利用できないとされていました。交渉で特約を解除することは難しく、特約が付いていると譲渡無効と判断される恐れがあったからです。このような環境は民法改正で大きく変わっています。現在は、当事者が債権の譲渡を禁止しても、債権の譲渡はその効力を妨げられないようになっています。つまり、債権譲渡禁止特約付き売掛金であっても、ファクタリングを利用できるようになっているのです。

債権譲渡禁止特約は、大手企業との取引で付されるケースが多いと考えられています。下請け企業にとっては、資金調達しやすい環境になったといえるでしょう。債権譲渡禁止特約が付されているためファクタリングを利用できなかった企業、何かしらの理由で資金繰りが悪くなっている企業などは、積極的にファクタリングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。特約の有無を問わず、売掛債権を現金化できる可能性があります。返済義務や信用情報への悪影響はないので、借入よりも利用しやすいはずです。